2025.06.11 失敗しないフリーアドレス導入の進め方

近年、「フリーアドレス」という言葉を耳にする機会が増えました。これは、従来の固定席ではなく、社員がその日の気分や業務内容に応じて自由に働く場所を選べるオフィススタイルです。
スマートフォンやノートパソコンの普及、無線LAN環境の整備が進んだことに加え、「働き方改革」や、新型コロナウイルス感染拡大による働き方の変化が導入を加速させています。座席を特定の個人に固定しないことで、オフィススペースを効率的に利用でき、コスト削減につながるほか、オフィス内のコミュニケーション活性化やセキュリティ向上といった効果が期待されています。

導入状況と多様化するフリーアドレス

オフィス家具メーカーのオカムラの調査によると、2020年9月以前は固定席が79%を占めていましたが、2020年9月～2022年9月の移転・改装後の導入状況では、固定席は38%まで減少しており、代わりに完全フリーアドレス、グループアドレス、ハイブリッドといった多様な形態が増加しています。

フリーアドレスを導入する理由としては、オフィス面積の最適化が最も多い回答でしたが、それに続いて部門を超えたコミュニケーションの活性化、従業員の自律的な働き方の促進、社員エンゲージメントの向上といった、より前向きな理由が上位を占めています。

フリーアドレスがもたらす効果

実際にフリーアドレスで働くワーカーは、いくつかの効果を実感しています。最も多く挙げられているのは、「仕事上関係がある人とのコミュニケーションが増える」（39%）、「ペーパーレス化が進む」（39%）、「仕事上関係がない人とのコミュニケーションが増える」（38%）といった点です。自身の「定位置」に縛られずに自由に移動できるため、部署や場所にとらわれず、他部署のスタッフと気軽にコミュニケーションを取りやすくなり、アイデア創出につながることも期待できます。

しかし、単にフリーアドレスの空間を用意しただけでは、そのオフィスを使いこなすことは容易ではなく、導入しても失敗してしまう企業は多いです。
フリーアドレスを成功させるためには、いくつかのポイントがあります。

1.運用ルールの作成
企業文化や業務内容に合わせた運用ルールを定めることが重要です。例えば、「連続で同じ席に座らない」といったルールは、席の固定化を防ぐのに役立ちます。

2.ツール・設備の活用
私物保管用のモバイルロッカーや、座席予約・位置情報検知システムなどのツールを活用し、快適に働ける環境を整えます。

3.目的・ルールの共有
設定したルールやフリーアドレス導入の目的を社員全体で共有し、習慣化させることが、フリーアドレスが形骸化するのを防ぎます。社員が「自分事」として捉えられるように、委員会を立ち上げるなどの社員参加型の取り組みも有効です。

導入時の課題と対策

フリーアドレス導入時には、運用ルールの周知・策定や、導入に消極的なワーカーへの説得などが課題として挙げられます。
導入に消極的なワーカーへのケアとしては、推進チームやトップからの啓蒙活動や、イベント・ワークショップの開催などが考えられます。運用変更の目的や意義、メリットをしっかりと伝えることが大切です。また、チームの結束力が低下しないかという懸念に対しては、チームで集まれる場所を計画したり、運用で週ごとや時間ごとに有効活用したりする方法があります。席の固定化に対しては、前述のルールのほか、月に一度「シャッフルデー」を設け、普段一緒に働かないメンバーと同じエリアで働く機会を作るなどの工夫も有効です。
フリーアドレスの導入は、働き方そのものを見直す機会です。単純な座席変更にとどまらず、企業の文化や働き方に合わせた計画と丁寧な運用を行うことで、その効果を最大限に引き出すことができるでしょう。

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